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オタクだってカリスマになれる?

「文化的ヒエラルキー」の時代の生き方

■気づいたら坂本龍一は「カリスマ」じゃなくなってた

 フィクサー→パリピ→マイルドヤンキーの文化的な階層構造は、影響力が伝わる仕組みをうまく説明しています。

 この構造は、そのままカリスマの影響力が伝播する仕組みに当てはまります。ちょっと整理してみましょう。

 フィクサーという存在は、カリスマそのものです。ただし、昔はフィクサー的な立場にいったんなったら、その後もずっとフィクサーの身分で居続けることができました。今時のカリスマは、頻繁に、それこそ数カ月単位で入れ替わる役職のようなものです。

 例えば、坂本龍一さんは以前なら圧倒的な影響力を持ったカリスマでしたが、今はそれほどでもありません。カリスマになろうとしてなれるものというより、カリスマ的な要素を持った人が、偶然にその立場に就くというのが正しいでしょう。

 カリスマから影響を受けて情報発信するパリピは、欧米的な言い方をするなら「セレブ」ですね。アメリカの学校なら、フットボール部のクォーターバックはセレブだし、チアリーダーもセレブ。「あいつはイケてる」と周りから注目されるようになった人たちがセレブということになります。

 セレブの言動とかファッションを大勢が真似するようになって、トレンドが拡大していくわけですが、セレブ自身はカリスマではありません。カリスマの持っているシナリオや思想性を持たなかったり、あっても弱かったりするからなんですね。

『カリスマ論』の第3章に挙げた例でいうと、ホームレス小谷やジョーのような小さなカリスマがセレブに当たります。キングコング西野は、セレブからカリスマになろうとしているところです。 

 セレブの影響を受ける層には、マイルドヤンキーのほかに、「リア充」や「オタク」もいると私は考えています。ここで私がいうマイルドヤンキー、リア充、オタクというのは、文化的な行動様式による分類です。

 マイルドヤンキーは、家族や友達を大事にする人。リア充は、収入に余裕があって消費を楽しむ人。オタクは、趣味に走る人。

 ただ、純粋に自分の趣味に没頭する昔ながらの「ガチオタ」と違って、この場合のオタクは「新オタク」です。話題になっているオタク的な趣味を、自分の属性として取り込む、ライトなオタク層を指しています。今は絶滅危惧種になったガチオタはセレブの影響など受けずに、自分の趣味に没頭します。

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岡田 斗司夫

おかだ としお

1958年大阪府生まれ。社会評論家。

1984年にアニメ制作会社ガイナックスの創業社長をつとめた後、東京大学非常勤講師に就任、作家・評論家活動をはじめる。立教大学やマサチューセッツ工科大学講師、大阪芸術大学客員教授などを歴任。

2010年に「オタキングex」(現FREEex)を立ち上げる。レコーディング・ダイエットを提唱した『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)が50万部を越えるベストセラーに。

その他、多岐にわたる著作の累計売り上げは250万部を越える。

近著に『カリスマ論』(ベストセラーズ)がある。


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  • 2015.11.07